娘は結婚するまで家にいるもんだ
一人暮らしといえば思い出すのは昨年他界した父のこと。
……っていうと良い思い出話に感じるかもしれませんが、残念ながら良い話ではなく、「可愛がって育てた娘も、でかくなったら育てた恩も忘れてこんなこと思うのか~」と、世の中のお父さんががっかりすることこの上ない話かもしれませんw
私が20代前半に就職先の近くで一人暮らしをしたいと言ったとき、母は
「ああ、あんたみたいな世の中知らないタイプは絶対に一度は一人暮らししたほうが良い!」
と大賛成。
しかし父は
「娘は結婚するまで一人暮らしなんてしなくていい!家にいるもんだ!」
と言い放ったんです。
そんなに娘を大事にするタイプじゃなかったので、このセリフにはちょっとびっくりしたんですよね。
まぁ、でも本音はすぐに次のセリフでわかりました。
「もし男でもつれ込んで、できちゃった婚でもされたら世間体が悪いじゃないか!」
……娘が可愛くて一人暮らしさせないわけじゃなくて、世間体かい!
元々世間体なんて気にしなくてもいい家なのにね。
世間体云々って、大抵世間体気にしなくてもいいレベルの家が言いますよねww
今彼氏がいないから大丈夫と言っても、「どうせ同棲とかしたいんだろ」とか「すき放題したいだけだろ」とぐちぐち言って信じない父に、母からまた強烈な一言が。
「ダメダメ、この子は今外に出さないと、結婚するまでどころか一生家にいるハメになるわよ!!自分の下着も未だ洗濯カゴに入れるだけの娘なんだから、デキ婚でもなんでも結婚してくれたら万々歳よ」
その母の一言で私の一人暮らしは決定しました。
……さすが母親。娘のことはよくわかっていらっしゃる。
引っ越してから一週間くらいして、私の仕事中に母が届け物をしに私の家にやってきました。
いざという時に合鍵は母に渡してあったので、勝手に入ったようで、届け物の郵便物の他に家で作ったであろう煮物とか、カレーやパスタなどのパウチなどが入っていました。
ひとり暮らしといえど電車で1時間強の距離。
郵便物なんて取りに行くし、郵送でもいいのに、一人暮らしの様子を見たくなるのは親の愛よね~と感謝しつつ、母に電話をしました。
「お母さん、煮物とかありがとう」
「ああ、今日はお父さんも一緒に行ったのよ。あんたの部屋に干してあったトランクスに発狂していたわよw」
「あー……」
父に嘘をついたんではありません。
たまたま一人暮らしが決まったタイミングで彼氏ができたんです。
気に入った部屋が退去待ちで、決めてから3ヶ月くらい待っている間に彼氏できたんですよねw
しかも、初一人暮らしの上にまだまだ付き合って日が浅くて浮かれている時期でしてね。
そりゃ暇さえあれば来ていましたよ、彼氏も。
でも、その後家に帰っても、たったの一度もそのトランクスの話は私にしなかった父。
そして、一人暮らしをしても結局30すぎまで結婚しなくて、父親をハラハラさせた私w
(ちなみに母は「上ふたりは結婚して孫もいるから、もうあんたは自立してくれれば文句言わないわよ」と言っていた……)
不器用な父だったので、なんだかんだ言って私を心配はしていたのだと思います。
愛情をうまく表現できなかった部分もあるんでしょうけれども、子供を持って親の苦労を知った今でも、もっと自分の損にならない方向で愛情を表現できなかったもんかいなと思っています。
私はそんな父を見て「愛情なんて持っているだけじゃ宝の持ち腐れ。言葉や態度で伝える努力をしないで『わかって』って思うのはあかんやろ」っていう娘に育ったものでw
未だにドラマとか映画とかで、不器用な父親とかが死んだ後に手紙とかで娘が愛情を知るシーンとか見ると素直に感動できません。
あ、これでも父には感謝していますし、仲が良い父娘だったと思います。
声をかけると言葉では否定的なことをいうものの、嬉しさがダダ漏れする父だったのでw、病気する前は一緒に飲みに行くことも結構ありましたし、娘のくせに不器用な父を可愛いとすら上から目線で思っていました。
暴力は振るいませんでしたし、学費等も出してくれましたし、普通のことをしてくれたことは非常にありがたいです。
でも、これだけ父親の文句を言っておいて、私も墓前で「いや~あの時はごめんね」と心の中でつぶやくという、ブーメラン刺さりまくりな娘なんですけれどもね。
40代の私が一人暮らしをしていたのは約18年前くらい。
18年前か……。私も年をとったもんだ。
ちなみに私の夫の場合、「一人暮らしするから」「わかった」で終わったらしいw
一人暮らし歴10年の夫は家事全般私より上手いです。
一人暮らしで確かにいろいろなことを学びましたが、家事能力は一人暮らしするかしないかじゃなくてやるかやらないかだよ、お母さん。