日本はいつまで技術大国でいられるのか
今回はフィギュアスケートと日本の技術力のお話です。
以前テレビ番組で、村主章枝さんが今のスケートのジャンプ技術の進化について「今のスケート靴は伊藤みどりさんの時に比べて格段に軽くなっている」という理由を挙げていました。
スケート靴は軽くなっても、ブレード(スケートの刃)がジャンプの衝撃に耐え切れなくなることが多かったとのことで、元選手の小塚崇彦さんが山一ハガネという会社に相談し、一枚の金属から切り出す日本製のブレードを開発したというニュースが先日流れてきました。
これぞ日本の技術力!すばらしい!
ともちろん思います。
が、今回のテーマはそこではなくて、日本の技術力って今どれくらい失われているのでしょう。
若い技術者は大手・中堅ばかり
私は製造業の事務仕事をしていたんですよね。
その仕事は町工場の人とよく話をします。
1人や夫婦で切り盛りしていたり、従業員さんが3~10人くらいの工場の人が主です。
この時代に半分弱位が手書きの請求書と納品書です。
仕事でPC使っている側としては図面をメールですら送れないような工場もあって結構面倒だなと思ったりするのですが、仕事はとにかく正確で早い!
大手メーカーの若い技術者が書いた発注用の図面を見て「これじゃこことここが干渉してNGが出るよ」と手書きでサラサラとポンチ絵(←正式な図面ではないメモ書きのような図面)を書いて「これでいいか担当に連絡して」というような、職人気質の人ばかりです。
まさに自分の知恵と手の感覚で製品を作る町工場の人を見ると、日本の技術力ってこうした方々が支えてきてくれたんだなと実感します。
でも、町工場だと若手でも40代くらい。
自分と同じか年上の人ばかりで、70代がやっている工場も少なくありません。
町工場の、しかも優れた技術を持っている人が、「後継者がいないから」と工場を閉鎖する話をよく耳にしました。
自分が大変な思いをしたから息子には普通の会社勤めを勧めたという方もいますし、とにかく「後継者」が育っている姿はほとんど見ません。
今の40代が70代になる30年後くらいには、昔ながらの商店街が淘汰されていったように、「町工場」は激減して中堅や大手の工場だけが残るのでしょうね。
つい親は楽をさせたくなる
自分が子供を育てていて思うのですが、つい親は先回りして「こちらの道の方が選択肢がある」と誘導してしまいがちです。
自分の子供が「中卒で就職する!」と言ったら「高校くらいは出ておきなさい!」って言うと思いますし、町工場で働くといったら「そこで一生働けるわけじゃないんだから、再就職のために武器(学歴や資格)は必要なんじゃない?」とか言ってそうです。
日本の技術すごい!って喜んでいる傍ら、あの「手に職」的な職人技は、過酷な労働環境だった日本だからこそ生まれていたのではないかとも思うんですよね。今の時代に「見て技を覚えろ!」なんて難しい気もしますし。
当然今は機械やパソコン等の性能が良くなって、3DCADの図面のデータをそのまま製品に切削してくれる機械などもあります。
でも、それじゃどこの国でも一緒というか……なんだか手に職的なものが消えていくのって、一縷の物悲しさみたいなものがあります。
以前別の記事でも話したように、勉強したくない子が中卒で技術を身につければそこそこ食べられるような世の中になってくれればいいのに。
蛇足だけど
この製品、当然数が出るわけじゃないし、コスト高そうですよねw
金属の塊から削り出すって、かなり歩留まり悪そうだわ……。
きっと製品がよければ使ってくれる人も増えてくれるでしょうけれども、それでも簡単にポーンと出せる値段じゃなさそう。
みなさんも聞いたことがあるかと思いますが、フィギュアスケートはとにかくお金がかかるスポーツです。
衣装にいくらだ遠征にいくらだ、リンク貸切にいくらだ……。
他のブレードより圧倒的に強度があれば、モノは高くともコスパ自体は悪くなさそうですが、いくらくらいかかるもんだかちょっと気になるところです。